制服記

いつまでも不自由を愛さないでね。

よなかにたべるはーげんだっつ

最近唯一リラックスして心から楽しめる時間は元カレと散歩しながら話す時間。こんな風に一緒に過ごすなど考えたこともなかった。

 

pm7:00に「今日散歩?」とひとこと送る。

「いいよ」っていってくれるのもなんとなく分かってる、何時でも私に合わせてくれるところが彼氏と違う。

 

手を振っても振り返してくれない、けれど律儀に乾杯はする。

否定されないという安心感、話す内容は他愛もないけど柔らかく受け止めてくれることに安心する。

 

恋愛の話になって彼は言う。

「タイプの人じゃないと愛がないんだよな」

「マイヘアみたいじゃん」

と返す。

愛ね、愛か、彼の口から愛という言葉が出るとは思わなかった。

まあそっか、もうあの頃から6年くらい経ってる。

 

昔の思い出話をしながら歩くと公園にたどり着く。

ちょっと寄ろう!くらいのノリで入った広い公園の一角にきゅっと集められた遊具が懐かしくなって、子供の頃に戻ったようにはしゃぐ。

20歳にもなると、公園で遊ぶとかそういう変哲もないことも、夜だから何も見えないからできる特別なことになってしまった。

白黒の反転するパーツを裏返したり、滑り台を滑ってスカートを濡らした。

彼は網のピラミッドの頂点が気に入ったようで、私が少し遠くから見上げたシルエットが綺麗だった。

思い出ばかり出てきて何も考えずに笑える時間が楽しかった。

 

また歩き始めて、大学生らしい話をする。

彼にもそんな側面があることにすこし驚きつつ、変わらない感性に安心する。

私も変わってしまっただろうか。6年もすれば人間は環境に揉まれて変わっていく。

今の恋愛の話になると、変わってないなあと思う。

めんどくさがりなのにちゃんと相手を思うところ、穏やかなところ。

私は順調だよと答え、2人で恋愛って難しいねと陳腐な結末で締める。

あの頃とは違って家の前まで送ってくれるようになった。お互い年齢を経ていることを感じる。

 

浮気されたどうこう、大したことでもなかったのに騒いでたあの頃の私はこんな6年後を想像できるはずもなかった。

成人式マジックなんてものはなかったけれど、もっといいものを手に入れられた気がしてる。

 

こういう人生の絡まりとか偶然とか、ふと思い出す記憶みたいに必然に感じられる飛躍がたくさんあればいいなと思っている。

こういう物語を紡ぐために生きている節が私にはある。